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アーツ&クラフツ展を見て

2008.11.15 | 過去のブログしんじ

11月9日(日)、京都国立近代美術館で開催されていた「アーツ&クラフツ展」に行きました。最終日でしたので、とても多くの人でした。

私にとっては今まで馴染みのない分野でしたが、英国のウィリアム・モリスから日本の民藝運動までの展示を一通り見て、「アーツ&クラフツ」という運動の全体像や広がりをよく理解できる内容でした。(蛇足ですが、高校で陶芸の勉強をした妻の指導で、河井寛次郎などの陶芸には幾度か触れていたので、ちょっと知ったかぶりできました(笑))

19世紀後半の英国で、産業革命によって大量生産される無機質な製品に囲まれた生活に異を唱え、手仕事の良さを見直し、自然や伝統から美を再発見して、シンプルなライフスタイルを提案した運動と理解しましたが、率直に「今日の日本にも通用する問題意識だな」と思いました。確かに、サービスや商品は多様化したとはいえ、実際今ある「和物ブーム」や「田舎暮らしへの憧れ」は、現代都市での消費文化に対する反動的な態度とも言えるもので、「アーツ&クラフツ」に通ずるものがあると言えると思います。運動の過程で生み出された成果品の建築や家財など自体には好き嫌いがありますが、運動自体は一考に値すると思います。

私は、「今こそ、伝統が未来を拓く!」と訴えていますが、こうした文脈で具体化すれば、「生活にゆとりと美を取り戻そう!」と言えると思います。例えば『逝きし世の面影』(渡辺京二著)などからも、江戸時代の日本においては、都市・農村のいずれでも自然や生活の美があり、ゆとりがあり、日々を楽しんでいたことが見て取れます。

年間3万人を超える自殺者、陰湿ないじめ、信じがたい犯罪などを生み出す「歪んだストレス社会」を文化・芸術・自然の美で和らげる、そうした取組みも非常に大切だと再認識しました。

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